Apple M2 Proチップと比較してメモリ帯域幅が小さくなったM3 Proでは、特定のメモリ操作でパフォーマンスが低下しそうです。詳細は以下から。
Appleは現地時間2023年10月30日、スペシャルイベント「Scary fast. (速いもの見たさ。)」の中で新たにMac用の第3世代Apple Siliconチップとなる3つの「M3、M3 Pro、M3 Max」と、それらを搭載する「iMac (24インチ, 2023)」と「MacBook Pro (14/16インチ, Nov 2023)」を発表しました。
このM3チップファミリーはMシリーズとしては初めて3ナノメートルテクノロジー(3nmプロセス)が採用され、CPUやGPU、Neural Engineはもちろん、ワットパフォーマンスもM2/M1チップファミリーと比較して大幅に改善されていることが強調されていました。
一方、設計上、LPDDR5メモリ3枚構成となったM3 ProチップとLPDDR5メモリ3枚の構成が可能なM3 Maxチップでは、18GB/36GB/96GBのメモリ容量でメモリ帯域幅が前モデルのApple M2 Pro/Maxと比較して25%小さくなっている事が既に発表されていますが、
CPU | GPU | Memory | Memory Bandwidth | |
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M1 Pro | 8コア(6P+2E) | 14コア | 16GB/32GB | 200GB/s |
10コア(8P+2E) | 16コア | |||
M2 Pro | 10コア(6P+4E) | 16コア | 16GB/32GB | 200GB/s |
12コア(8P+4E) | 19コア | |||
M3 Pro | 11コア(5P+6E) | 14コア | 18GB/36GB | 150GB/s |
12コア(6P+6E) | 18コア | |||
M2 Max | 12コア(8P+4E) | 30コア | 36GB/64GB/96GB | 400GB/s |
38コア | ||||
M3 Max | 14コア(10P+4E) | 30コア | 36GB/96GB | 300GB/s |
16コア(12P+4E) | 40コア | 48GB/64GB/12GBGB | 400GB/s |
先程Apple M3 Proチップ搭載のMacBook Pro (14インチ, Nov 2023)をピックアップしたので、メモリベンチマークアプリAmorphousMemoryMarkを利用して旧M1 Pro,M2 Pro*チップのメモリRead/Write値を比較してみました。
ベンチマーク
まず、システム情報で確認したところ、Apple M1 ProチップにはSamsung製のLPDDR5メモリが、M2 ProチップにはHynix製のLPDDR5メモリ、そしてM3 ProチップにはMicro製のLPDDR5メモリが搭載さていたため、Appleは現在も複数のサプライヤーを採用しているようです。
AmorphousMemoryMarkの結果は以下の通りで、AmorphousMemoryMarkはメモリのシーケンシャルとランダム Read/Write値を、macOSのmemmove()/bzero()関数を使う方法と、メモリキャッシュを使うテンポラリ読み込み/書き込み命令temporal load/store、そしてキャッシュを使わないnon-temporal load/store命令で測定してくれますが、
memmove()/bzero()関数を利用したApple M3 ProとM2 Pro**のシーケンシャル(SEQ1MKT8) Read/Writeを比較すると、メモリ帯域幅の影響かRead/Write値が約25% 下がっているのが確認できます。
ただ、SEQ1MKT1やランダムアクセス、他の命令を利用したM3 ProチップのRead/Write値はM2 Proと同等か、それを上回る結果となっているので、メモリ帯域幅の低下の影響を受けるワークフローはそれほど多くはないと思われますが、どうしても今年01月に発表されたM2 Pro/Maxシリーズ以上の性能を求める方は、48GBユニファイドメモリへのカスタマイズ込みで60万円以上となるM3 Maxチップ搭載のMacBook Pro (14/16インチ, Nov 2023)を選択する他なさそうです。
- MacBook Pro – Apple(日本)
- メモリモジュールの性能を GB/s で測定 – AmorphousMemoryMark
コメント
今年の2月にM2 Pro(19Core)Mac miniを購入した身としては、多少ホッとしたり少しガッカリしたりの内容ですが・・・。
たぶんAppleのチップ(製品)戦略として、メインチップ(&GPU)の高性能化よりも、AIエンジンや3Dエンジンの強化&付加で、消費電力を抑えてパフォーマンスを確保する方向に切り替えるのかも知れませんね。
ベンチ系の結果を見るだけだと、M3 Proのメインチップ性能はM2 Proの1〜2割増程度ですが、生産コストや消費電力、最終的なパフォーマンスでバランス良く構成されているのだと思います。
Macmini 2023の「M2 Pro 12(8P+4E)core-CPU 19core-GPU」と
Macbook Pro Nov.2023の「M3 Pro 12(6P+6E)core-CPU 18core-GPU」を比べると
https://browser.geekbench.com/macs/mac-mini-2023-12c-cpu
https://browser.geekbench.com/macs/macbook-pro-16-inch-nov-2023-12c-cpu-18c-gpu
CPU(Single-Core Score)で 17.4% 向上
CPU(Multi-Core Score)で 6.9% 向上
となっており、ベースクロックの3.5GHz→4.0GHz(14.3% 向上)を考えると全体的に想定ほどは処理性能が出ていない結果です。パフォーマンスコアと高効率コアの比率が大きく出てるのかな?
またGPU性能が関わる数値は、
GPU(OpenCL GPU Score)で 0.9% 向上
GPU(Metal GPU Score)で -2.8% 減少
となっていて、コア数1つの差と、GPU処理速度に影響するメモリ帯域幅が200GB/s→150GB/sと減っているのも影響が出ているようです。
ただリアルタイム3D処理用エンジンや、AV1動画用エンジンは搭載されているので、メインCPU/GPUでは無用に処理向上(=消費電力増大)をさせずに、専用エンジンで専用処理能力と低消費電力を両立させてバランスを取っているイメージですね。
何というか、動画編集と3Dゲーム市場を意識したのかなと言う感じで、それが一般ユーズとAppleは捉えてるのではないでしょうか。
メモリ: 18 GB
種類: LPDDR5
製造元: Hynix
11月7日に購入したMacBook Pro M3Proのメモリです。