AppleがM1ファミリーと比較して最大30%速くなったCPUとDynamic Cachingやレイトレーシングアクセレーションを採用したGPUを搭載した3nmプロセスの「M3チップファミリー」を発表しています。詳細は以下から。
Appleは現地時間2023年10月30日、スペシャルイベント「Scary fast. (速いもの見たさ。)」を開催し、その中で元Intel R&Dセンターのマネージャーで、現在はAppleのハードウェアテクノロジー担当SVPを務めるJohny Srouji(ジョニー・スルージ)さんが、新たに第3世代Apple Siliconチップとなる3つの「M3」、「M3 Pro」、「M3 Max」を発表しました。
M3ファミリーはiPhone 15 Proシリーズに搭載されているA17 Proチップと同じく、髪の毛の断面ほどの大きさに20万個のトランジスタを組み込める3ナノメートルテクノロジー(3nmプロセス)を採用しており、
M3ファミリーには、Apple SiliconのGPUとしては最大の飛躍となる次世代GPUが搭載され、この次世代GPUはDynamic Cachingとハードウェア(H/W)アクセラレーテッドレイトレーシングやメッシュシェーディングなど新しいレンダリング機能を初めて搭載しているそうです。
GPU
Sroujiさんによると、これまでのGPUは最も負荷が大きい1つのタスクを基に、ソフトウェアがコンパイル時にローカルGPUメモリの割当量を決定していたため、複雑なプログラムでは特にGPUを十分に活用出来ていませんでしたが、
M3ファミリーのGPUに新たに搭載されるDynamic Cachingは、リアルタイムでハードウェアのローカルGPUメモリの使用量を、そのタスクに必要な量だけ割り当てて使われるようになるため、これによりGPUの平均使用率が劇的に向上し、負荷の高いプロ向けのアプリやゲームのパフォーマンスが大幅に向上することが期待できるそうです。
また、M3ファミリーの次世代GPUには、iPhone 15 Proシリーズにも搭載されているA17 Proと同じH/Wアクセラレーテッド・レイトレーシングやメッシュシェーディングが導入され、光の特性をモデル化しリアルで物理的に正確な3Dレンダリングやジオメトリ処理が向上し、ゲームや3Dグラフィックスアプリがより高速になるそうで、
AppleのテストではM3チップファミリーのGPU性能はM1チップファミリーと比較して最大2.5倍の速さでMaxon Redshiftのレンダリングが可能で、M2チップファミリーと比較しても1.8倍の速さとなったそうです。
CPU
次に、M3チップファミリーに搭載される次世代CPUについては、ファミリー平均でM1ファミリーと比較して高性能コアが30%、高効率コアが50%高速になり、M2ファミリーと比較しても高性能コアが15%、高効率コアが30%高速になっており、
一方で、アーキテクチャの改良とパフォーマンスの改善を行いながらも1Wあたりのパフォーマンス(ワッパ)は向上しており、M3はM1の最大パフォーマンス時と同じパフォーマンスをM1の半分の消費電力で発揮することが可能で、GPUパフォーマンスもM1のピークパフォーマンスを約半分の消費電力で発揮することができるそうです。
これは、Intel Core i7-1360P 12コア@2.2GHz(TB:5.0GHz) CPUを搭載したMSIのPrestige 13 Evo A13M-050USと比較しても、同じCPUパフォーマンスに対する消費電力は4分の1で、GPUパフォーマンスに関しては5分の1の消費電力で同じパフォーマンスを発揮できると発表されています。
Neural Engine
Apple M3チップファミリーのM3, M3 Pro, M3 Maxは他のApple Siliconと同じく16コアのNeural Engineを搭載しますが、M3ファミリーのNeural Engineはより高速&高効率化され、毎秒18兆回の演算処理が可能になっており、M1ファミリーと比較して60%、M2ファミリーと比較して15%高速にTopazのDeNoise AIやGigapixel AIなどで画像処理を行うことができるそうです。
Media Engine
Media Engineは、Apple M2チップと同じく、H.264やHEVC(H.265)、ProRes、ProRes RAW、ビデオエンコード/デコードメディアエンジン、ProResエンコード/デコードエンジンに加え、A17 Proチップと同じく動画圧縮コーデックAV1のデコードエンジンも搭載されたため、YouTubeやNetflixなど動画配信サービスでより高品質な動画再生が可能になります。
Apple M3ファミリーの比較
Apple M3ファミリーは、現在M3 (無印), M3 Pro, M3 Maxの3種類が発表されており、Apple M3はM2より50億多い250億、M3 ProはGPUコア数が減ったためかM2 Proの400億より30億少ない370億、M3 MaxはM3 Maxより250億多い920億のトランジスタが採用されており、
メモリはM3がメモリ帯域幅100GB/sのユニファイドメモリで容量は8GB, 16GB, 24GBから選択可能、M3 Proはメモリ帯域幅がM2 Proより低速な150GB/sですが16GB, 36GBのユニファイドメモリから、M3 Maxがメモリ帯域幅300GB/sの32GB, 96GBまたは、メモリ帯域幅400GB/sの48GB, 64GB, 128GBのユニファイドメモリから選択可能です。
Apple M3 |
Apple M3 Pro |
Apple M3 Max |
|
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ロゴ | |||
CPU | 8コア 高性能:4コア 高効率:4コア |
11/12コア 高性能:5コア or 6コア 高効率:6コア |
14/16コア 高性能:10コア or 12コア 高効率:4コア |
GPU | 10コア | 14/18コア | 30/40コア |
メモリ | 24(Max), 16GB, 8GB | 32GB(Max), 16GB | 128GB(Max), 96GB, 64GB, 48GB, 36GB |
メモリ帯域 | 100GB/s | 150GB/s | 300GB/s 400GB/s |
Neural Engine | 16コア | ||
トランジスタ数 | 250億 | 370億 | 920億 |
外部ディスプレイ | 最大1枚 | 最大2枚 | 最大4枚 |
I/O | Thunderbolt(3)/USB4 | Thunderbolt 4 |
M1~M3チップのスペック
ベースとなるM3チップはMacBook Pro (14インチ)モデルとiMac (24インチ, 2023)で採用され、次世代の8コアCPUと10コアまたは8コアGPUを搭載し、最大メモリ容量は24GBでメモリ帯域幅は100GB/sとなっており、
8コアCPUはM1と比較して35%、M2と比較して20%高速で、10コアGPUはM1と比較して65%、M2と比較して20%高速で、実際のアプリケーションを利用した画像処理では、M1チップと比較して60%、M2チップと比較しても40%高速にイメージフィルターを適用できるとコメントされています。
Apple M3 | Apple M2 | Apple M1 | |
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ロゴ | |||
CPU | 8コア 4つの高性能コア 4つの高効率コア |
||
GPU | 10コア 8コア |
8コア 7コア |
|
メモリ | 24GB(Max) 8GB, 16GB |
16GB(Max) 8GB |
|
メモリ帯域 | 100GB/s | 66GB/s | |
Neural Engine | 16コア | ||
演算数 (TOPS) |
毎秒18兆回 | 毎秒15.8兆回 | 毎秒11兆回 |
トランジスタ数 | 250億 | 200億 | 160億 |
外部ディスプレイ | 最大1枚 | ||
メディアエンジン | H.264, HEVC ProRes, ProRes RAW ビデオデコードエンジン ビデオエンコードエンジン ProResエンコード/デコードエンジン AV1デコード |
H.264, HEVC ProRes, ProRes RAW ビデオデコードエンジン ビデオエンコードエンジン ProResエンコード/デコードエンジン |
なし |
I/O | Thunderbolt/USB 4 |
M1~M3 Proチップのスペック
MacBook Pro (14/16インチ)に採用されるApple M3 Proチップは、M3をベースにCPUとGPUコアを強化し、最大12コアCPUと18コアGPUを搭載し、メモリ容量は最大32GBでメモリ帯域幅はM2 Proより狭い150GB/sとなっていますが、
CPUパフォーマンスはM1 Proより20%、GPUパフォーマンスはM1 Proより40%、M2 Proより10%高速で、実際のアプリケーションを利用したテストでは、M3 Proチップを搭載したMacBook Pro (16インチ)はM1 Proチップを搭載したMacBook Pro (16インチ)より40%、M2 Proチップより20%高速に画像処理を行うことが出来たそうです。
M3 Pro | M2 Pro | M1 Pro | |
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ロゴ | |||
CPU | 11/12コア 高性能:5/6コア 高効率:6コア |
10/12コア 高性能:6/8コア 高効率:4コア |
8/10コア 高性能:6/8コア 高効率:2コア |
GPU | 14/18コア | 16/19コア | 14/16コア |
メモリ | 36GB(Max), 18GB | 32GB(Max), 16GB | |
メモリ帯域 | 150GB/s | 200GB/s | |
Neural Engine | 16コア | ||
演算数 (TOPS) |
毎秒18兆回 | 毎秒15.8兆回 | 毎秒11兆回 |
トランジスタ数 | 370億 | 400億 | 337億 |
外部ディスプレイ | 最大2枚 | ||
I/O | Thunderbolt 4 |
おまけ
ちなみに、Appleは5nmプロセスで製造していたM1, M2チップファミリーにおいて、M1/M2 Maxチップを元にM1/M2 Proチップのダイをデザインしていましたが、M3チップファミリーではM3 Proチップも独自にデザインされたようです。
M1~M3 Maxチップのスペック
現在公開されているM3ファミリーの最高峰となるApple M3 Maxチップは、最大16コアCPUに加え40コアGPUを選択可能で、メモリ容量はデスクトップ向けのM1/M2 Ultraと同じ最大128GBを選択することが可能になりました。
これにより、M3 MaxのCPUパフォーマンスはM1 Maxより80%、M2 Maxより50%高速で、GPUパフォーマンスはM1 Maxより50%、M2 Maxより20%高速で、
Cinema 4Dを利用したテストでは、M3 Maxチップを搭載したMacBook Pro (16インチ)はM1 Maxチップを搭載したMacBook Pro (16インチ)より2.5倍、M2 Maxチップより2倍高速にレンダリングを行うことができるとコメントされています。
M3 Max | M2 Max | M1 Max | |
---|---|---|---|
ロゴ | |||
CPU | 14/16コア 高性能:10/12コア 高効率:4コア |
12コア 高性能:8コア 高効率:4コア |
10コア 高性能:8コア 高効率:2コア |
GPU | 30/40コア | 30/38コア | 24/32コア |
メモリ | 128GB(Max), 96GB, 64GB, 48GB, 36GB | 96GB(Max), 64GB, 32GB | 64GB(Max), 32GB |
メモリ帯域 | 300GB/s 400GB/s |
400GB/s | |
Neural Engine | 16コア | ||
演算数 (TOPS) |
毎秒18兆回 | 毎秒15.8兆回 | 毎秒11兆回 |
トランジスタ数 | 920億 | 670億 | 570億 |
外部ディスプレイ | 最大4枚 | ||
I/O | Thunderbolt 4 |
Apple Mx Pro/Maxの種類
M1 Pro
- Apple M1 Pro with 8-core CPU and 14-core GPU, 16-core Neural Engine
- Apple M1 Pro with 10-core CPU and 14-core GPU, 16-core Neural Engine
- Apple M1 Pro with 10-core CPU and 16-core GPU, 16-core Neural Engine
M1 Max
- Apple M1 Max with 10-core CPU and 24-core GPU, 16-core Neural Engine
- Apple M1 Max with 10-core CPU and 32-core GPU, 16-core Neural Engine
M2
- Apple M2 with 8-core CPU and 8-core GPU, 16-core Neural Engine, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング
- Apple M2 with 8-core CPU and 10-core GPU, 16-core Neural Engine, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング
M2 Pro
- Apple M2 Pro with 10-core CPU and 16-core GPU, 16-core Neural Engine
- Apple M2 Pro with 12-core CPU and 19-core GPU, 16-core Neural Engine
M2 Max
- Apple M2 Max with 12-core CPU and 30-core GPU, 16-core Neural Engine
- Apple M2 Max with 12-core CPU and 38-core GPU, 16-core Neural Engine
M3
- Apple M3 with 8-core CPU and 8-core GPU, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング, 16-core Neural Engine
- Apple M3 with 8-core CPU and 10-core GPU, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング, 16-core Neural Engine
M3 Pro
- Apple M3 Pro with 11-core CPU and 14-core GPU, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング, 16-core Neural Engine
- Apple M3 Pro with 12-core CPU and 18-core GPU, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング, 16-core Neural Engine
M3 Max
- Apple M3 Max with 14-core CPU and 30-core GPU, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング, 16-core Neural Engine
- Apple M3 Max with 16-core CPU and 40-core GPU, ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシング, 16-core Neural Engine
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