Mac mini (2018)はApple T2チップによりXcodeでのBuildタイムやffmpegでのH.265/HEVCエンコードタイムがiMac Pro並に高速になっているそうです。詳細は以下から。
Appleは本日2018年11月07日より、Appleの第2世代Mac用SoC「Apple T2」を搭載したMac mini (2018)の発売を開始し、それに伴い事前にメディア向けにレビュー用マシンを貸し出していますが、興味深いことにAppleはこのMac mini (2018)を事あるごとに「Appleは開発者へ歩み寄り、Mac Proをアップデートすべきだ」と批判してきた、InstapaperやTumblrを開発/設立したMarco Armentさんにも貸し出したそうで、
Marcoさんは自身が現在開発を続けているポッドキャストアプリ「Overcast」用のBuildマシンまたはメディア・エンコード用マシンとして、Mac mini (2018)を以下のように評価しています。
XcodeのBuild
AppleはMac mini (2018)の公式サイトで、前モデルと比較して最大5倍のパフォーマンスを持つMac mini (2018)をXcodeサーバーやメディア用サーバーとしてもPRしていますが、
最大6つのCPUコアと超高速I/Oを持つMac miniは、Xcodeの完璧なパートナーです。
あなたのアプリケーションを最高速で構築しながら、バックグラウンドで自動テストを実行できます。Mac mini – Apple(日本)
Marcoさんのテストによると、新しいMac mini (2018)はCPUパフォーマンス(Geekbench)こそXeon Wプロセッサを搭載したiMac Pro (2017)には及ばないものの、SSDコントローラーを統合したAppleの第2世代SoC「Apple T2」は非常に優秀で、Appleが最大3.4GB/sのシーケンシャルReadとPRしている通り(iMac Proは2.8GB/s Read,3.3GB/s Write)、Mac mini (2018)のBlackmagic Disk Speed BenchmarkスコアはiMac Pro (2017, 4TB SSD)やMacBook Pro (13-inch, 2018, 1TB SSD)と肩を並べるほどで、
The Blackmagick Disk Speed Test shows that the raw SSD performance is effectively identical to the other T2 Macs shipped to date, and a huge improvement over the four-year-old Mac Mini.
The 2018 Mac Mini – Marco.org
XcodeでOverCastアプリをBuildしたところ、Buildタイムは6-CoreのMac mini (2018)が10-Core iMac Pro (2017)と同等の速度でBuildを完了したそうで、Mac mini (2018)はXcodeのBuildマシンとしても十分に利用できると評価しています。
This Mac Mini builds my app, Overcast, much faster than my maxed-out 13-inch MacBook Pro, and about as quickly as my 10-core iMac Pro! Obviously, to achieve this result with only 6 cores, it’s not maxing out the CPU 100% of the time — it hits it in bursts while juggling a lot between the SSD and memory — but the result is that it’s incredibly fast as a development machine.
The 2018 Mac Mini – Marco.org
メディアエンコード(H.265/HEVC)
また、Appleは先のメディアイベントで、Apple T2によりMac mini (2018)はH.265/HEVCビデオを前モデルと比較して最大30倍高速にCompressorでエンコード出来るとPRしましたが、
Marcoさんがこれについてもffmpegで評価したところ、Mac mini (2018)は最大30倍とはならなかったものの、4倍以上高速にエンコードできたそうで、Mac mini (2018)はメディアサーバーとしても十分に活用できるとしています。
A lot of people use Mac Minis as media or Plex servers, so I ran an H.265 transcoding test with ffmpeg. This maxes out all CPU cores, so the results predictably scale with the core count: the 6-core Mac Mini was much faster than the 4-core MacBook Pro, but the 10-core iMac Pro beat them both.
The 2018 Mac Mini – Marco.org
補足
HEVCエンコード/デコードのH/Wアクセラレーションを受けられるMac/iOSデバイスは以下の通りで、Apple T2搭載のMacは対応アプリが必要で、
ffmpegではVideoToolboxオプション(-c:v hevc_videotoolbox)を利用したH.265/HEVCのApple T2ハードウェアエンコードはiMac Pro, MacBook Pro, Mac miniともに同じスコアだったそうです。
But if an app supports the T2’s hardware HEVC encoder,3 it can go much faster. And since every T2 so far performs identically, all T2 machines — from the 2018 MacBook Air to the iMac Pro — encode HEVC this way at the same speed, and all in complete silence because they’re barely touching the CPU.
The 2018 Mac Mini – Marco.org
まとめ
AppleがMarcoさんに貸し出したレビュー用のMac mini (2018)は他のメディアに貸出したベースモデル(Core i3)ではなく、CTOモデルのCore i7-8700Bと1TB SSDを搭載したMac miniだったため、価格は決して安く(税別210,800円以上)はありませんが、
Marcoさんが“I Can’t Believe The Mac Mini Is This Awesome, I Can’t Even Say “Again” Because It Never Was”とまでコメントしているので、5KディスプレイやXeonクラスのCPUが必要なく、省スペースなXcode/メディアサーバーが必要な方は検討してみる価値があると思います。
Apple lent me a high-end configuration for review — 6-core i7, 32 GB RAM, 1 TB SSD — which would cost $2499 (much of which is the SSD). This would’ve sounded crazy to spend on a Mac Mini a few years ago, but when it’s specced up like this, it’s targeting a much higher-end market than the previous model could. Compared to similarly specced iMacs and MacBook Pros, the pricing is generally reasonable.
The 2018 Mac Mini – Marco.org
追記
コメントやメッセージでご指摘いただきましたが、現在Apple T2を利用できるアプリはApple製の一部のアプリやオプションに限られているため、プライベートAPIなどを利用していると思われますが、MacハードウェアチームのシニアディレクターTom Bogerさんはスペシャルイベントで“New Mac Mini also has the Apple T 2 security chip with as many new features including HEVC video encode that get this 30 times faster”と発言しているので、T2にはHEVCエンコーダが内蔵されていると思われます。
One thing: Compressor only uses the T2’s hardware acceleration if you’re outputting 8-bit HEVC. The 10-bit setting is still done in software, which is much, much slower, even on an iMac Pro.
— Marco Arment (@marcoarment) 2018年11月6日
また、動画圧縮に関してはSSDの暗号化などもサポートするApple T2チップ内にHEVCエンコーダが内蔵されており、QuickTimeでのHEVC圧縮が30倍に高速化されるという。実際、毎秒60フレームの4K動画30秒をHEVCで圧縮するのにかかった時間は59秒。毎秒30フレームの4K動画ならば実時間程度で圧縮できる。
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コメント
intelの功績を、Apple T2のおかげで性能上がったとか、ミスリードすぎる。
T2プロセッサーが、HEVCのエンコードを高速化しているというタイトル・内容になっていますが、間違いだと思います
WWDC 2017 セッション Introducing HEIF and HEVC にて、説明しているのは、T2プロセッサーと同時に採用された、第6世代以降のIntel Coreプロセッサーのハードウェアエンコーダーです
このIntel Coreプロセッサーのハードウェアエンコーダーを使っている、Apple純正のアプリなどは、従来のMac miniの30倍の速度が出ます(とApple社が説明しています)
ソフトウェアの対応が必要で、対応していなければ、CPUの高速化分の向上(ffmpegなど)しかありません
Macro Armentさんのツィートなどを元ネタにされていますが、この方の勘違いだと思います
ご指摘ありがとうございます。
>T2プロセッサーが、HEVCのエンコードを高速化している
この情報はAppleのOctober Event 2018で”Apple T2 security chip, with many new features including HEVC video encode”と発表されているので、間違いないと思います。
ttps://youtu.be/bfHEnw6Rm-4?t=1758
このApple T2を利用するにはアプリ側が必要だというご指摘はそのとおりで、QuickTimeやCompressorなど利用できるアプリは限られており、Compressorでも8-bit HEVCしか対応していない(10-bitはNG)のが現状のようで、まだ開発者向けのドキュメントも公開されていませんが、MacBook Air (Retina, 13inch, 2018)のT2も同様だそうです。
>また、動画圧縮に関してはSSDの暗号化などもサポートするApple T2チップ内にHEVCエンコーダが内蔵されており、QuickTimeでのHEVC圧縮が30倍に高速化されるという。実際、毎秒60フレームの4K動画30秒をHEVCで圧縮するのにかかった時間は59秒。毎秒30フレームの4K動画ならば実時間程度で圧縮できる。
ttps://toyokeizai.net/articles/-/247866?page=4
ということは、ffmpegが使ってるのはGPU、QuickTimeが使ってるのはApple T2?
YouTuberの方に、旧機種を含めたベンチとってもらって、アクティビモニターでどんなファイルが読み込まれてるか検証してもらうのが手っ取り早そう。