AppleはWWDC 2015でiOS 8で新たに導入されたMetalをOS Xにも移植し、El Capitanでは「Metal for Mac」が実装されると発表しましたが、Metal for Macを使用できるMacは限られるかもしれません。詳細は以下から。
Metal for MacはOpenGLを介さずにCPU&GPUにアクセスすることでドローコール処理を最大10倍向上させると言われていましたが(WWDC 2015基調講演の21分辺り)、このMetal for Macは「El Capitanがインストールできる全てのMacではサポートされないのではないか?」とArs Technicaで毎回OS Xのレビューを担当しているAndrewさんは予想している様です。
Metalは、グラフィックスの新しいコアテクノロジーです。[…]
Metalはゲームに最適なものになるように開発されているため、ドローコールパフォーマンスも最大10倍向上し、リアリティーとディテールを次のレベルへ連れて行きます。
[OS X El Capitan – Apple]
Andrewさんは「OS X 10.11 El Capitanのシステム要件は2007年のMacもサポートすると予想されるが、8年前のGPUではMetal APIに対応する事は出来ないでしょう。Appleはまだ公式のサポートリストを出していませんが、iOSのMetalはOpenGL ES 3.0をサポートしたApple A7&A8が必要で、OpenGL ES 3.0はOpenGL 4.3のサブセットのため、OpenGL 4.3をサポートできるMacがMetal for Macに対応すると予想されます」とコメントしており、
First look: OS X El Capitan brings a little Snow Leopard to Yosemite http://t.co/SsMtIlHuy1 by @AndrewWrites
Not all Macs are going to support Metal, simply because the support list for El Capitan goes all the way back to iMacs and MacBook Pros from 2007, and you can’t magically build support for new APIs into eight-year-old GPUs.
[…]
Metal on iOS requires an Apple A7 or A8 GPU, both of which also support the OpenGL ES 3.0 API. OpenGL ES 3.0 is a subset of OpenGL 4.3, released back in 2012. So we hypothesize that if your GPU’s hardware supports at least OpenGL 4.3, it ought to support Metal in OS X.
[OS X El Capitan brings a little Snow Leopard to Yosemite – Ars Technica]
この仮定をもとにMetal for Macに対応したMacをリストアップしていくと、以下のGPUを搭載したMacは全て対応すると予想され、
- Intel HD 5000~, 6000~シリーズのiGPUを(HaswellとBroadwell世代のCPU)搭載した2013~2015年製のMac
- Nvidia GeForce 600~, 700~シリーズのGPUを搭載した2012~2013年製のMac
- AMD Radeon 5000~, 6000~, R9 200, R9 300シリーズのGPUを搭載した2010~2011年製と2014~2015年製のMac
- AMD FirePro D300, D500, D700 GPUを搭載した2013 Mac Pro
OS X 10.11 El Capitanのシステム要件はクリアするものの、Metal for Macには対応していないMacは以下のGPUを搭載したMacということになります。
- Intel HD 3000~, 4000~シリーズのiGPUを(SandyとIvy Bridge世代のCPU)搭載した2011~2012年製のMac
- Nvidia GeForce 8000~, 9000~, 100~, 300~シリーズのGPUを搭載した2007~2010年製のMac
- AMD Radeon 2000~, 4000~シリーズのGPUを搭載した2007~2010年製のMac
El Capitanをフルサポートするのは?
このためArs TechnicaはOS X 10.11 El CapitanのDeveloper Beta版はYosemiteなどと同じく以下のMacにインストール可能としながらも、Metal for Macを含むEl Capitan全ての機能をサポート出来るMacは2013年以降に販売されたMacと2011~2012年に発売された一部のMacだと予想している様です。
OS X 10.11 El Capitan Developer betaのシステム条件はOS X 10.8 Mountain Lion ~ 10.10 Yosemiteと同様。 http://t.co/ISh5DlUAlj http://t.co/keRiXC3tG7
By our reckoning all Macs from 2013 and onward should definitely be Metal-compatible, several Macs from 2012 and 2011 and a handful of Macs from 2010 may be Metal-compatible, and anything from 2009 or before probably won’t be Metal-compatible. Bear in mind that we don’t actually know anything—this is just educated guesswork. But we’d expect the final support list to be pretty close to the outline above.
[OS X El Capitan brings a little Snow Leopard to Yosemite – Ars Technica]
これらは全て推測で、現在開発者向けに公開されているOS X 10.11 El Capitan Developer BetaもドライバーがOpenGL 4.3に対応していないため、最終的なサポートリストは未定ですが、Metal for MacでAdobe CCが最大8倍速くなるのは限られたMacになるかもしれません。
関連リンク:
- OS X El Capitan – Apple
- OS X El Capitan brings a little Snow Leopard to Yosemite – Ars Technica
コメント
今も売ってるMacBookPro非Retinaはこれに対応しない可能性が高いのか…
動画を見ると OpenGL と一緒に OpenCL もディスってるように見えるけど、この前の Blender の問題は解決しない感じ?
愛機Air mid2012はメタル対応しないのかー(´・ω・`)
> 以下のGPUを搭載したMacは全て対応すると予想され、
> ・AMD Radeon 5000~, 6000~, R9 200, R9 300シリーズのGPUを
> 搭載した2010~2011年製と2014~2015年製のMac
> 2013年以降に販売されたMacと2011~2012年に
> 発売された一部のMacだと予想している様です。
矛盾しているのだが、AMD Radeon HD 5750 を搭載した Mid 2010 の iMac は対応するのだろうか・・・。
>>2
おれもそれ気になったAppleはOpenGLだけじゃなくOpenCLもMetalで置き換えようとしてるのかな?
OpenCLはAppleが作ってクロノスグループに移管した規格だったのにもう変えちゃうのかなw
なぜ置き換えるのか?答えは簡単だ。
囲い込みがしたいからさ。
今まではiOSもOSXも、なるべく互換性のあるOpenGLベースで書けるようにしてきた。その方が成長中のプラットフォームへ開発者を取り込みやすいからだ。
しかしここまでプラットフォームが成熟して、開発者の数も大勢いる現状では、もう他のプラットフォームを考慮する必要はない。充分に大きなエコシステムができたから、これからはApple製ハードウェア専用のコードを書いてもらえばいい。
しかしこうやってパフォーマンスという餌で釣って、囲い込みをするのは悪い案じゃないが、iOSだけじゃなくAndroidにも、もしくは他のプラットフォームにもマルチで展開するようなやつらはそもそもこういうものを考慮しない。もしくは利用しているゲームエンジンが対応した時に半自動的に使うことになるだろう。
実際のところ、MetalはAMDが提唱したMantleのやり方と同様だが、KhronosはMantleの次世代APIをVulkanとして規格化することにしたそうだから、ここでもまた規格が乱立するというわけだ。
まあAppleとしては、他のハードに逃げられやすい標準規格よりは、自社向けに専用で書いてもらえるようなAPIを出すことを選んだということだろう。Microsoftとは対照的に進んでいて、あまり今の時代にそぐうやり方でもない気がするが、Appleだから唯我独尊なプレゼンスは変わってないんだろうね。