AppleのGPTKを利用しMac上でDirectX 12対応のWindowsゲームを実行できるようにするWineラッパー「Whisky」が開発を終了しています。詳細は以下から。
WhiskyはIsacc Marovitzさんが2023年04月からオープンソースで開発しているWindows互換レイヤーのWineを利用しMac上でWindows用のアプリやゲームを実行できるようにしてくれるCrossOverベースのWineラッパーで、AppleがWWDC23に「Game Porting Toolkit (GPTK)」を公開して以降はGPTKにも対応し、

WWDC23で発表されたGame Porting Toolkit
Windows用に開発されたDirectX 12対応ゲームをMac上で動作させることも可能になり、MacでDirectX 12ゲームを動作させる環境を素早くセットアップできることから、WWDC24ではWindowsゲーム開発者がMac上でゲームの動作を評価する方法としてAppleにも認められていましたが、
また喜ばしいことに コミュニティでこのツールの導入が進み、WhiskyやHomebrewなどのプロジェクトやCrossOverなどの製品を通じて既存のゲームの評価を開始するための新しい方法が提供されています。
WWDC24:Port advanced games to Apple platformsより
開発者のIsacc Marovitzさんは先週末、Whiskyのサポートドキュメントを更新し、WhiskyおよびWhiskyWine (Whisky用のWine Build)へのアップデートの提供を終了し、開発とメンテナンスを終了すると発表しています。
Whisky is no longer actively maintained.
IsaccさんはWhiskyの開発終了に関し多くの質問を受けたそうですが大きな理由としては、1.自身がまだ学生でWhiskyの運営に割ける時間がなくプロジェクトに対する興味を失ったこと、2.Whisky自体がWineコミュニティにとってプラスになっていないことを理由としてあげており、
“Why are you no longer updating it?”
I lost interest in the project. Running it is incredibly time-consuming, and as I’m still a student and also not being paid for work on Whisky it becomes hard to justify working on it if I no longer enjoy it.ソフトウェアのサポートは非常に難しく、
特に、2.に関しては開発当初のWhiskyはWineのフロントエンドとしてだけの機能を実装するつもりだったものの、AppleがGPTKをリリースして以降は独自のWine(WhiskyWine)を開発しなければならなくなり、ValveがSteam用に開発しているProtonのようにフルタイムで開発に取り組む人材や時間も無いことから「TLDR; Whisky harms Wine on Mac.(WhiskyはMacのWineに害を与える)」という結論に至ったそうで、ユーザーに対してはWinの開発にも貢献し資金を提供しているCrossOverを購入するようにコメントしています。

Wisky for Mac
なお、この発表に対しCrossOverを開発するCodeWeaversのJames B. Ramey CEOは、Whiskyはオープンソースで多くのゲームユーザーに無料で動作環境を提供したことで、お気に入りのゲームのサポートを求めるユーザーや動作の改善を求めるユーザーなどサポート要求が押し寄せ、それに応えられないとRedditでユーザーから不当なコメントを受けていたことも把握しており、
As CEO of CodeWeavers, I want to acknowledge that Isaac did great work. He also got a lot of great press on the Internet for both Whisky and Wine. He built a useful tool that was innovative and one that people enjoyed using. And he was incredibly respectful to the Wine community, including CodeWeavers.
Whisky’s Legacy, and the Spirit it Leaves Behind – CodeWeavers
ソフトウェアのサポートは非常に難しく、Whiskyのような無料のツールによりCrossOverのような有料のツールの収益が下がり、それによりMacのWineコミュニティに害を与えると認めたことは非常に勇気のある行動で、CodeWeaversの全員がIsaccさんが今後もテクノロジーを追求していくことを願っているとコメントしています。
おまけ
なお、Whiskyは既にアクティブなメンテナンスを終了していますが、macOS 15.4 Sequoiaで発生したWhiskyが完全に動かなくなるような自体には例外的にアップデートを提供する可能性があるそうなので、Whiskyユーザーの方は今のうちに移行作業を行ったほうがよさそうです。

Fixed configuration view crashes on macOS 15.4
- Whisky-App/Whisky – GitHub
- Maintenance Notice – Whisky
- Whisky’s Legacy, and the Spirit it Leaves Behind – CodeWeavers
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